INTERVIEW

伊藤寛之スペシャルインタビュー

伊藤寛之 スペシャルインタビュー

伊藤寛之。
バンド「SPORTS」でメジャーデビュー、停止。
バンド「ENO」活動開始、停止。
バンド「ザ・チャレンジ」に加入、メジャーデビュー。
そして、自身の連続企画「あつまれ!哺乳類」を2016年3月6日から開催決定。
現在に至る。

2016年2月25日20:00ライブハウス下北沢GARAGEにて
活動の記録だけでない、それぞれの時点の胸中を振り返りながら、“伊藤寛之”の本質を探った。

インタビュー=三宅正一 構成=下北沢GARAGE

1 2 3

現在から過去 | 伊藤寛之の歴史と胸中を遡る編

itohiro-i1

——このタイミングで自分のイベントやろうと思ったきっかけは?

伊藤寛之(以下:伊藤):手相の話しになるんですけど。手相がますかけ線っていうやつで。

——それって最強の手相ってやつですよね?

伊藤:そんなに気にしなかったんだけど、ちょっとふと気になって調べてみたら、いろいろパターンがあって。ますかけ線にはふたつあって、両手にある人はもう、最強だと。

——戦国武将とか。

伊藤:左手にある人は35歳まで波乱万丈なんだけど、強運に生きるみたいな。で、35歳以降は安定の道を好む傾向がある、っていう。

——なるほど。

伊藤:要はそこまで飛ばすんだけど、そこから急に落ち着いて、平坦な人生を過ごすと。

——伊藤くんは左手にある人と(笑)。

伊藤:そう、左手にある(笑)。で、右手の人は真逆で、35歳までは平凡なんだけど、35歳以降盛り上がってくる破天荒な人生っていう。僕は左手なんですよね。だから、僕は今36歳だから、あ!って思って。確かになーみたいな。ここまでそんなめちゃくちゃな人生じゃないんだけど、まぁ音楽やってきて、楽しいことも悲しいこともありつつも、やっぱり楽しかったなってところで。今ちょっと落ち着いちゃってる感があって。

——わお。

伊藤:(笑)

——それは個人に照らしあわせたときにそう思ったんですか? ほら、今やってるバンドで言えば忙しいじゃないですか。

伊藤:うん。まぁそうなんだけどね。でも、個人的な意味で言えば、音楽活動って間が空きながらも、たまに思いつきでやったりとかそういうことだけだったから。今年からはやりたいなっていうのがあって。

——あぁ。それはもうちょっと個人の音楽活動っていうのを、ちゃんとしっかり動かして示したいという思いが強いっていうことなんですか?

伊藤:ずっと音楽活動をやっているように見えるんだけど、じつは自分と向き合って作った曲って、たぶん30歳以降は1曲もなくて。職業作家的なこともやってるし、それこそ今やってるバンドにも曲は書いているけど、それって自分とはちょっと関係ない。と言うと、語弊があるかもしれないけど……。

——自分が在籍しているバンドに楽曲提供しているみたいなニュアンスもあるのかな?

伊藤:そうそう(笑)。本当に自分が、今何が好きで、何をやりたいんだろうなっていうところから生まれているものではないから。今やってるバンドは、役割分担がある程度見えてて。歌をうたう人、曲を作る人、歌詞を書いてパフォーマンスする人、ライブでボトム支える人たち。その中で言うと、自分は音楽的な曲的なところですごく貢献したいなっていう気持ちで参加しているから。

——めっちゃそうですよね。

伊藤:そこはやれてて。そこに対しての達成感とか楽しさはすごく見出している。でもトータルで音楽やるっていうときに、自分の体を動かしてやるっていう時にわりとできてないなっていう。

——30歳を過ぎてからそういう感じがあるなっていうのは、体感としてあると。

伊藤:そうですね。

——ENOで言えばどうなんですか?

伊藤:たぶん20代の終わりから、ENOは31、2歳くらいまでやっていて。ライブは両手で数えれるくらいしかやってない。

——あっ、そうなの!?

伊藤:そう。

——ENOっていうのはどういう位置づけだったの?

伊藤:自分が書いた曲をライブでやるためのバンド。それまでSPORTSっていうバンドでメジャーデビューして、自分のライフワークバンド的な感じの位置づけで活動してきたから、それがなくなったときに線引きがけっこう難しいなと思って。SPORTSとしてライブをやれなくなっちゃった後に、その時代の曲をやるっていうのは、自分の中で線が引けなかった。そのときのメンバーたちと作った曲っていう感じもあるし。だからそこを容易に個人名義ですぐやっちゃっていいのかな?っていう。

——それはそれで、ちゃんとSPORTSというバンドに対する思いが強かったってことですよね。

伊藤:もしかしたら好きでいてくれたお客さんがどう思うのかなってことを、先回りして考えすぎてただけなのかもなぁ。

——今はもうちょっと別にニュートラルな感じ?

伊藤:全然そう(笑)

——なるほど。

伊藤:今もうとにかく弾き語りやるにしても、曲数が足りないから、何か曲はないかなっていう。それ以前に遡って探してるくらいなんですよ。

——SPORTSの曲ってENOでもやってたんですよね?

伊藤:やってる、やってる。

——ENOのメンバーは、本当に手伝ってくれてる人たちって感じだったの?

伊藤:そうですね、初期はSPORTSのベースで、ドラムはSPORTS時代に知り合ったドラムです。

——ENOは休んでるというか、バンドとしては解体してる状態なんですか?

伊藤:ほぼ解体してますね(笑)

——でも、それはイヤな感じがあってそうなったってわけじゃないんですよね?

伊藤:全然、全然!(笑)

——普通にそうなったという。

伊藤:そうそう。でも本当に音楽やるのって難しいなって思って。ブログとかもそうじゃないですか? ブログをやめたわけじゃないんだけど(笑)、半年くらい更新してなくて、たまに更新しちゃったりなんかして(笑)。みんなだいたいブログを途中でやめるじゃないですか、アメブロをがんばってる人以外は(笑)。

——そうね(笑)。

伊藤:最後の更新は2011年とか。

——mixiもアカウント残したままみたいな(笑)。

伊藤:そんなんばっか。自分もENOの前にSPORTSとの間にBROKEN BOYというバンドをやってたんですけど。全部投げっぱなしっていうか(笑)。

——今活動してるバンドで忙しいのと、いろいろ作家活動もあるとは思うけど、もうひとつ新しくバンドを作ってみたいとかそういう思いはないんですか?

伊藤:ないっすね〜。

——ないんだ。

伊藤:いや、バンドって大変じゃないですか(笑)。

——大変でしょう、それは。

伊藤:語弊があって伝わっちゃうかもしれないけど、僕はどんなメンバーでも別によくて。メンバーに対してこだわりがない。

——そうなんだ(笑)。

伊藤:シンガーソングライターだから、バンドの中でイニシアチブを握ってはいるんだけれども、そこまで独裁国家じゃないっていうか。

——それはSPORTS時代からそうだったの?

伊藤:そうそうそう。でもベースの人とかドラムの人って逆にそれがやりづらかったりとかして。変に民主的な態度に出られると逆に困るっていう。

——メンバーが迷うと。フロントマンとしてちゃんと引っ張ってってほしいみたいな(笑)。

伊藤:そう。(笑)

——伊藤くんにはアーティスト然としたエゴみたいなものがあまりないっていうことなのかな。自分の曲に対してはあるんだろうけど。バンドで、ほかのメンバーに自分の曲を演奏してもらうことに対して。

伊藤:自分の曲に対してもエゴがなくて。

——ないんだ!(笑)。

伊藤:うん。(笑)。

——面白いね(笑)。

伊藤:ここをこうやってよ、というのはほぼない。

——元来の作家気質なんですかね?

伊藤:自分で曲を書くときは、アレンジも全部自分でやるんですけど。それを完全再現してほしいとは思わない。自分の引き出しの底はもう見えているから。無限大だと思ってなく。けっこう早い段階からそう思ってて。

——20代とか?

伊藤:20代とか。

——達観してるなぁ(笑)。

伊藤:たいしたことないなとは思ってるんだけど、そこに対して他力本願に人に求めて、うまくいかなかったら人を責めるとか、そういうふうには絶対ならない。

——そうやって制作のことで、自分のわがままでケンカになった経験もないってことですよね?

伊藤:ない。今まで1回もないかも。

——伊藤くんは早い段階で底が見えたなかで、それでも音楽を続けてきた要因っていうのはなんだったんですか?

伊藤:う〜ん。やっぱり人の曲を聴いたときに、自分の思い通りになってないっていうか。すごく傲慢な考え方かもしれないんだけれども、テレビでふと聴いた曲で自分だったらこうするのにとか思うことがよくあって。そこのメロディー、あそこにいかないのはもったいないな〜とか思うんですよ。ていうときに、自分でやりたいって思う。そこで初めてストレスが生じるっていう(笑)。

——他の人の曲を聴いて、初めてこういう曲を作りたいって思うんだ。

伊藤:そうなんですよ。たぶん曲の作り方はけっこう変わってるとは思うんですけど。例えば今、(GARAGEの事務所のモニターで)音楽が流れてるでしょ? このコードだけを要因として自分に残して、このメロディーを乗っけないで自分なりのメロディーを乗っけて作るっていう。

——コードだけ借りるみたいな感じか。いつもコードあり気なんですか?

伊藤:コードあり気だと思う。そこにどういうメロディーを乗せるか。

——SPORTS時代から?

伊藤:たぶん昔からそう。絶対音感を持ってるわけじゃないけど、相対音感的なところは鍛えられているというか。それは自分がメロディーを作るときに必要な感覚なので。そこには絶対的な自信を持ってるんですよね。人が作るフォーマットに対して、自分だったらそこは2倍の尺とか2音上にいくとか、そういう考え方があって。

——やっぱりバンドのフロントマン気質というより、作家気質が強いんだろうな。

伊藤:そうなんです。

——こういうことが歌いたいとか、こういうテーマでバンドやりたくてとか、そういうこととはまた全然違う感じなのかね。

伊藤:何もない荒野で、材料を探して、ここにこんな家を建てようみたいな感じ。アーティスト気質の人って、0から1を生みだすでしょ? でも僕は、例えばほかの人が藁で作った家を見て、家を作るという概念がまず自分の中で生じたときに、藁じゃない材料でもっと見栄えよくした家を隣に建てたいと思う(笑)。

——そういう感覚はどこで養われてると思いますか?

伊藤:人のことを観察するのがすごく好きだから。そういうところなのかなぁっていう気はします。反面教師じゃないけど、人の負の側面を見て、コレクションして、こんなどうしようもないやつがいるとか思うんですよね(笑)。

——めっちゃ性格悪いね!(笑)。

伊藤:でも自分は、あいつほど嫌われたくないから、あえて少しだけ性格悪く見せようと思って、さじ加減をはかるとか(笑)。

——そういう発想を踏まえて音楽的の源泉になってるのは?

伊藤:音楽的な部分……。どこなんだろうなぁ? 自分の生まれ育ったのはあんまり音楽を聴く家庭ではなくて。それこそプレーヤーとかもなかったんじゃないかなっていうくらい。レコードプレイヤーはあったけど、CDラジカセとかもなかったから。特にこれを聴いて育ったという感覚はなくて。

——小さいころから楽器を触ってたとかもなく?

伊藤:ないない。

——そうなんだ。

伊藤:ピアノを中1の時に始めたのかな。それは姉ちゃんが2人いて、2人ともピアノを習ってたから、自分もやりたいなって思ってたんだけど、なんとなく言いそびれて。中学生になってから言ったっていう。

——あんまいないよね、ピアノを中学生から始める男の子って。それからずっと習ってたの?

伊藤:3年間くらいしか習ってないです。そのあとすぐに曲を作りだしてしまって。

——ピアノで作曲してたんですか?

伊藤:ピアノで作ってた。今もピアノ。

——そこからバンドをやりたいと思った理由は?

伊藤:これもまた性格の悪い話しなんだけれども。高校に入ってからできる友だちって、やっぱり音楽が好きな人たちと仲よくなるんですよね。その人と話すと「俺、バンドやってるんだ」みたいな。その人が入ってるスタジオを1回見に行ったことがあって。それを見てやっぱりひどいなと思って。

(2人爆笑)

——本当に相対的にとらえるんだね。

伊藤:うん。そこで自分を凌駕するものに出会っていたら、たぶん音楽の道を歩んでなかったと思うんですよ。音楽のファンでずっと続けてるというか。そこでプレーヤーとしての力量の0ができたといいますか(笑)。

——そのバンドはコピーとかしてた?

伊藤:コピーやってた。いわいるロックバンドだったので、キーボードがいないんですよ。普通にボーカル、ギター、ベース、ドラムがいて、その中で目についたのがギターで。で、ギターやりたいと思った。あいつよりも、もっと違うもの、もっと上手く弾けるんじゃないかなと思ってやり始めたんです。彼らのバンドって、地元でけっこう人気があって、オリジナルもやり始めていて、ライブの動員もそれなりにあって。その背中を見ながらも、「あんなもの」みたいな感じで自分はバンドをやっていたんですよね。彼らもけっこういいところまでいったんだけど、解散してしまったんですよ。それから僕も上京して、その時点で気づいたら背中を追い越してた。

——SPORTSで?

伊藤:そうですね。

——伊藤くん、めっちゃダークたらこだね(笑)。

伊藤:ダークたらこ(笑)。

——こんがり焼けてる感じですね、中が(笑)

(2人爆笑)

——表面はさ、めっちゃピンクなんだけど、中は真っ黒っすね(笑)。

伊藤:真っ黒っすね(笑)

——バンドをやり始める動機がそもそもおもしろい。

伊藤:モテたいとか、憧れのプレーヤーがいてその人の真似をするとか、そういうのじゃなくて。「あいつより……」っていう(笑)。

——つねに対象はいるんですね。

伊藤:対象はいる。心の中に。いないとやっぱり自分のモチベーションがないって、振り返るとそう思う。

——SPORTSのときとかはさ、ソングライティングの対象とは別に、バンドとしてのそういう対象はいたの?

伊藤:SPORTSをやっているときは、下北系ギターロックが全盛で。周りのバンドを見ると、定義づけは難しいけれど、歌謡曲から生まれてるような、日本語を生かしたすごく聴きやすいロックをやってるバンドがたくさんいて。っていうか、そういうバンドしか本当にいなくて。そういう人たちに対して、じゃあ俺はこういうことをやるっていうスタンスではいたんですよ。誰がどうとかはなかったんだけど。

——そうなんだ。

伊藤:例えばサビですごくエモーショナルに展開するってことに対して、極力それを排除するっていうことは考えてた。逆に言うと、その要素は自分の中になくて。話しが戻っちゃうけど、邦楽とかもほとんど聴いてなくて。だからバックボーンが自分の中にないんですよね、これっていうのが。

——でもポップな曲いっぱい作るじゃないですか。それは邦楽由来のものじゃないっていう感じなのかな?

伊藤:たぶん違うと思う。

——今やっているバンドの曲でもJ-POP由来にも通ずるような音楽性はあるのかなとは思うんだけど。

伊藤:それは100%計算し尽くして作ってる。

——いわゆるJ-POP的な曲も作れろうと思えば作れる?

伊藤:全然作れる。

——それはいつの間にか自分の身になってたんですか?

伊藤:自分の中でつかんでるですよね。どうしたらそうなるか。

——アーカイブ化するのが上手いんだろうね。吸収力がある。

1 2 3
 イベント情報